躾の目的は教えることです。傷つけることではありません。

挨拶の仕方、歯の磨き方、箸の持ち方、衣服の着方、靴の脱ぎかた、戸の開け閉め、手の洗い方、お風呂の入りかた、布団の畳み方、時間を守ることや人に迷惑をかけないこと等々、社会生活で必要とされる基本的な礼儀作法をしっかり身に付くよう繰り返し、繰り返し丁寧に教えます。

例えば、いろいろな物を口に入れている子どもにお母さんは「これは食べ物じゃないから食べられないよ」と食べ物とそうでないオモチャや石などの見分けをその都度、その都度丁寧に教えます。
5本指でご飯を食べようとすれば「手で食べるのはみっともないよ」と他の人から見たら体裁が悪いことを教えます。そして、道具を使って食べることを教え、扱いやすいスプーンを与えます。子どもはスプーンを使って食べ物を口に入れることを学びます。スプーンを上手に使えるようになった頃を見計いお母さんは「〇〇ちゃんの箸と茶碗だよ」と個人所有の食器を揃え、「お茶碗は軽くて熱くないからね。〇〇ちゃんでも口元まで持ってこれるよ。そうしたらこぼさないで食べれるよ」と茶碗を口元まで持ってきて箸で食べる日本の食文化を本格的に教えます。西洋のスプーンと違って日本の箸は持ち方も使い方も独特です。難しい道具を使って子どもはご飯を食べようと毎回必死です。側でお母さんは子どもの頑張りを焦らず、優しく、励ましながら見守ります。毎日練習するお陰でみるみる箸でご飯を摘まむことが出来るようになります。
このように日々、日々小さな困難をいくつも乗り越え、ようやく食事をする準備の完了です。
さて、食卓に各自の食器を並べ食事の始まりです。「いただきます」の挨拶で食べはじめることを教えます。これはお米を作ってくれた人、食事を作ってくれた人、全てに感謝の気持ちを持って有り難く頂くことを教えます。そして、食事は家族皆で和やかに美味しく食べることも教えます。食べ終わったら「ごちそうさま」の挨拶で終うことを教えます。もしも食べ残しがあった時には「もったいない、まだ残っているよ」と最後までしっかり食べることを教えます。一粒たりとも粗末に扱わない日本の精神文化です。

躾ることは単に「茶碗を持って肘をつかないで」と形だけを強制したり、押し付けたりするものではなく「何故そうするのか」という根拠とそれにまつわる心の有り様までも教えなければなりません。それは日本の大切な文化を伝えていくことになるからです。

家庭で、自分の事は自分で出来るようにと躾られた子どもは自信を持って人と協調することが出来ます。これが土台となってはじめて、知識を学ぶ学校教育へと踏み出せるのです。

人の土台は躾です。その上に様々な知識や経験を積み上げ、やがて自立していきます。その日が来るように今をしっかり躾ることが大切です。
優しく、丁寧に、繰り返し、教えましょう。

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